はじめに
ビーズミルでは、粉砕媒体としてボールやビーズを使用します。
一概にボールやビーズといっても、大きさ、材質など様々です。
ビーズミルにおいて、使用するビーズはどのように選定する必要があるのか、メディア径とメディア材質とに分けご紹介します。
メディア径
エネルギー
メディア径については、原料の最大粒子径の10倍を目安とすることが一般的です。目的が粉砕であれば、衝撃エネルギーを大きく与える為、メディア径を目安よりも大きくします。目的が解砕や分散であればメディア径を目安よりも小さくし、原料とメディアの接触回数を多くなるようにします。また粒子や分散剤が大きなエネルギーを受け再凝集するような場合には、メディア径を目安よりも小さくし、再凝集を防ぐこともあります。
一般的な粉体であれば時間をかけて粉砕することで、粉砕後の粒子径はメディア径の1/1000程度になります。
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具体的な例を紹介します。下の表は、当社「SCミルロング」で3種類のジルコニアビーズを使用し、無機物を目標粒子径まで粉砕したときの生産能力とエネルギー原単位の比較です。ビーズ径が小さいほど、生産能力が大きく、エネルギー原単位が小さいことがわかります。これはビーズが小さいことで、同体積あたりのビーズ個数や比表面積が大きくなり、材料に接触する確率が上がるためです。
またビーズ径が小さい方が、エネルギー原単位※も小さい結果となりました。これはビーズを小径化することで材料に効率良くエネルギーを与えていることを意味します。
今回の処理物では、ビーズ径が小さい方が生産能力、エネルギー原単位共に良い結果が得られましたが、濃度や粘度によっては小さいビーズを使うことで粉砕エネルギーが不足し、粉砕時間がかかることで逆の結果となることもある為、注意が必要です。
ビーズ径[mm] | |||
---|---|---|---|
処理能力[kg/hr] | 58.5 | 44.4 | 32.4 |
エネルギー原単位[kW・hr/kg] | 0.16 | 0.22 | 0.34 |
エネルギー原単位=粉砕・分散するのに要した積算電力[kW・h] / 粉砕・分散した粉末質量[kg]
コンタミネーション
下の表は、上記テストを行ったときの摩耗量です。ビーズ径が大きいと摩耗量も増える傾向にあります。ビーズ径が大きいことで、ビーズ1つ当たりのエネルギーが大きくなり、ビーズの摩耗量が増えます。また、エネルギー効率と摩耗量には関係性があり、エネルギー効率を高めると、摩耗量が減り、コンタミネーション(以下、コンタミ)を減らすことができると言われています。
ビーズ径[mm] | |||
---|---|---|---|
ビーズの摩耗率[%] | 0.60 | 0.82 | 1.5 |
メディア材質
エネルギー
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原料に与えるエネルギーを制御する一つの方法として、メディアの材質があります。材質により比重が異なりますので、メディアの材質を変えることでエネルギーを調整することが出来ます。大きなエネルギーが必要な処理には、比重の大きい材質を選定し、大きなエネルギーを与えます。逆に、大きなエネルギーを加えることで粒子表面が活性し再凝集を起こすような原料には、比重の小さい材質を選定します。
左図は珪砂の粉砕速度を異なるメディア材質で比較したデータです。メディア径は統一しています。ステアタイト、ハイアルミナ、ジルコニア、鋼球の順にメディアの嵩比重は大きく、粉砕時間は短くなります。この結果により、嵩比重を管理することで粉砕エネルギーの制御ができることを示しています。
コンタミネーション
他元素のコンタミが問題になるのであれば、耐摩耗性に優れる材質を選定する必要があります。特に摩耗性がある原料では、メディアの摩耗は著しく、その摩耗粉がコンタミとなるので注意しなければなりません。コンタミを抑制する為には、硬度が高く、靭性が高い材質を選定することが好ましいですが、硬度が高く、靭性が高いからといって、単純にコンタミ量が減るわけではありません。処理物の性状に応じて材質を選定する必要があります。
また、ジルコニアやアルミナなどを処理する場合は、同材質のメディアを使用し、異成分のコンタミが出ないよう対策します。食品関係であれば、磁性のあるメディア材質を用いて、後工程の除鉄装置で取り除けるようにします。
原料への色付き
白色原料を色付きせず粉砕するには、白色のメディアを使用する必要があります。白色原料をスチールボールやSUSボールなどの金属ボールで粉砕すると、金属コンタミによりグレーに変色してしまいます。ジルコニアボール、ハイアルミナボールを使用すれば、メディア自体が白色ですので、原料に色付きすることなく粉砕することが出来ます。

金属コンタミ例
粉砕メディア
品名 | 材質 | 特徴 | 色 | 硬さ | 充填密度 | サイズ |
---|---|---|---|---|---|---|
カーボンスチールボール | SWCH10R | 一般用 | 灰白色 | HRC60 | 5.0 | 1/16”, 3/32”, 1/8”, 3/16”, 1/4”,3/8” |
クロムスチールボール | SUJ2 | 一般用 | 灰白色 | HRC62-67 | 5.0 | 1/16”, 3/32”, 1/8”, 3/16”, 1/4”, 3/8” |
ステンレスボール |
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超硬ボール | WC | 耐摩耗性良好、 比重最大 |
灰白色 | HRA90 | 10.0 |
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ジルコニアボール | Y-PSZ | 耐摩耗性良好 | 白色 | 1250 (HV10) |
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ハイアルミナボール | AL2O3 | 一般用 | 白色 | 1100 (HV10) |
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炭化ケイ素ボール | SiC | 耐摩耗性良好 | グレー | HRA94 HV2100 |
2.0 |
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窒化ケイ素ボール | Si3N4 | 耐摩耗性良好 | グレー | HRA91 HV1600 |
2.0 |
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