はじめに
リチウムイオン電池(LiB)の性能向上(高出力化、高密度化、長寿命化)のために、正極・負極材料の改良開発が盛んに行われています。しかし、電極材には欠点が存在し、それらが電池性能を下げる要因となっていることから、欠点を補うために導電助剤を使用します。導電助剤は、電子伝導性の高いカーボン系の材料です。今回は導電助剤の役割と当社機器の処理技術を紹介します。
導電助剤の役割
正極材は、電池容量の大きさ、高い起電力という特性を有している反面、
粒子内部の抵抗が原因で電子伝導性は低いです。¹⁾
そこで、電子伝導性の高い導電助剤を粒子間に介在させ、その抵抗を低減し、導電パスを確保することで、電池としての性能が向上します。
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負極材は黒鉛のような炭素系が使われることが多く、電子伝導性の問題はありません。しかし、近年、負極材として酸化物系や金属系が開発され、これらは正極材と同じく電子伝導性が低いため、導電助剤が必要です。また、充放電を繰り返すと負極材の体積が変化するため、隙間ができ、電池性能が劣化します。導電助剤はこの体積変化を緩和してくれるため、電池性能を維持するという役割を果たします。¹⁾
一般的な導電助剤
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どの材料も電子伝導性が高く、導電助剤としての利用が注目されていますが、いずれも比表面積が大きく、凝集性が高い性質があります。導電助剤は形成する導電パスが重要であり、凝集粒子のままだと、導電性能が低下してしまいます。そのため、凝集粒子を解砕・分散処理することで、正極材との良好な導電パスを形成します。
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また、良好な導電パスを確保するには、活物質と導電助剤を複合化する方法もあります。これまで、複合化は正極材での利用が多く、元々カーボン系が使われる負極材での利用は多くありませんでしたが、近年、合金系負極材の検討も盛んであるため、負極材と導電助剤の複合化も注目されています。²⁾
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導電助剤は電池性能を向上させることはできますが、電池としては導電助剤の添加量を抑え、活物質の割合が大きいことが望まれます。そのため、導電助剤自体の性能改善を進めつつも、性能の良い導電助剤を効率良く利用できるようにすることも重要です。
処理事例(カーボンナノチューブ)
繊維状であるカーボンナノチューブは絡まりやすく、凝集している状態だと活物質との接点数が少なくなるため、導電性を良くするためには、分散性が高い状態にする必要があります。
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当社機器の提案
アトライタ(乾式・湿式、粉砕、解砕処理)
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目標粒子径:5~50µm(乾式)
0.5~500µm(湿式)
【耐汚染対策】
接粉部を耐汚染仕様としてジルコニア、アルミナ、ナイロンにできます
ダイナミックミル(乾式粉砕、解砕)
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目標粒子径:3~10µm
【連続式】
乾式で粉砕、解砕を連続的に生産!
【耐汚染対策】
粉砕室のセラミックス仕様が可能です
SCミル(湿式粉砕、解砕、分散)
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目標粒子径:100~500nm
【大流量循環システム】
L/Dが小さいことから、大流量で運転してもビーズの偏りがなく、処理の管理が容易です。
MSCミル(湿式、解砕、分散)
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目標粒子径:100nm以下
【省エネルギー】
特殊な粉砕室とローターでビーズに均一にエネルギを与え、効率よく処理できます
FMミキサ(混合、分散、複合化)
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【多種多様な粉体処理】
粉体の混合、分散処理のみならず、加熱混合や溶融・溶解を伴うペースト処理も可能で、乾燥、コーティング処理や改質、複合化なども行えます。
【耐摩耗処理】
耐摩耗溶射により金属コンタミを嫌う粉体処理に適応します。
コンポジ(複合化)
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【高速処理】
100m/sの羽根周速度と衝突板の効果で強力なせん断力が生じ、効率の良い複合化処理が可能です。
【スケールアップ】
大型機の実績とテスト機を完備し、「FMミキサ」で培った実績とノウハウで大型機へのスケールアップを確実に行います。
プラネタリミキサ(混合)
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電極材、導電助剤、溶媒のスラリペースト化
【高粘度処理】
高粘度活材のスラリ化、高分散処理ができます
参考サイト
1)3分でわかる技術の超キホン リチウムイオン電池の電極添加剤(バインダー/導電助剤/増粘剤)
https://engineer-education.com/lithium-ion-battery14_electrode-additive/
2)二次電池導電剤としてのカーボンの材料設計
https://www.jstage.jst.go.jp/article/micromeritics/55/0/55_2012011/_pdf/-char/ja
3)電池技術から
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/66/1/66_1_P_2/_pdf
4)負極用導電助剤、合材電極及びリチウムイオン二次電池
https://patents.google.com/patent/JP2015138633A/ja
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