リチウムイオン電池正極材
はじめに
リチウムイオン電池正極材とは、リチウムイオン電池を構成する要素「正極」、「負極」、「セパレータ」、「電解質」のうち、「正極」の役目を担う材料のことです。正極はリチウムを含む遷移金属酸化物で構成され、充電時にはリチウムイオンを受け取る役割を果たします。
正極材の種類と特徴
コバルト酸リチウム (LiCoO₂)
・高エネルギー密度が得られるため、リチウムイオン電池の標準材質として広く普及。
・熱的安定性に欠けるため、発火の危険性があり、車載用には使われていない。
ニッケル酸リチウム(LiNi₂O₂)
・コバルト酸リチウムよりも高エネルギー密度が得られる反面、コバルト酸リチウムよりも熱的安定性と耐久性に懸念がある。現在のところ実用化は困難とされている。
マンガン酸リチウム(LiMn₂O₄)
・安全性が高く、車載用電池が主流。
・急速充電・急速放電ができる。
リン酸鉄リチウム(LiFePO₄)
・安価でサイクル寿命・カレンダー寿命が長く、安全性が高い。
・エネルギー密度が他の材質より低い。
・車載用や蓄電システムなど体積を多く確保できる用途で一般的に使用されている。
NMC系(ニッケル, マンガン, コバルト、LiNixMnyCozO₂ ) ※x,y,zは下付き文字
・エネルギー密度が比較的高く、サイクル寿命も長い。
・原材料の高騰でコスト面が懸念点となる。
NCA系(ニッケル, コバルト, アルミニウム、LiNixCoyAlzO₂ )※x,y,zは下付き文字
・エネルギー密度は比較的高い。
・耐熱性に課題が残る。
当社が提案できる処理
【乾式粉砕】
大気中あるいは不活性ガス雰囲気で乾燥した粉体を粉砕する処理です。
【湿式粉砕】
粉体を溶媒と混合した状態、すなわちスラリー化された状態で粉砕する処理です。
【分散】
粉体を凝集のない単一粒子にして、溶媒中で一様に分布させる処理です。
【解砕】
粒子凝集体や造粒物のような比較的弱い力で凝集した材料を解きほぐす処理です。
【混合】
2種類以上の粉体を均一に混ぜ合わせる処理です。
【複合化】
2種類以上の素材を組み合わせて、物理的・化学的に異相を形成させる処理です。
【乾燥】
溶媒などで湿った材料に熱を加えて材料中の溶媒を蒸発除去する処理です。
【造粒】
液架橋や粘着性を利用して微粒子を会合・凝集させ、見かけのサイズを大きくする処理です。
正極材の課題
リチウムイオン電池正極材の課題としてよく取り上げられるのが、熱的不安定性による発火の危険性です。外部衝撃や短絡などなんらかの原因で局所的に熱が発生し、その熱が正極結晶内の酸素を熱分解、分解された酸素によってさらに熱が発生、それらが電解質の有機溶剤と反応し、
発火・爆発につながるといった具合に一度熱暴走が発生してしまうと非常に危険です。さらにそれらを止めることが困難なため、熱暴走リスクの低い(またはリスクのない)正極材の研究・開発は業界全体の大きなテーマの一つとなっています。また、昨今の正極材の研究・開発・製造競争の影響により、全体的に原材料価格が高騰しており、原料の選定や歩留まりなどコスト面も重要なテーマとなっています。
機器導入に関してのご相談から専門的な技術セミナーまで
様々なシチュエーションに対応します。
技術情報には掲載していない情報もお伝えすることができますので、
当社機器にご興味を持たれた方は是非お問い合わせください。